【作品紹介】
収録作品:「アーモンド」
訳者:矢島暁子
出版社:祥伝社
初版発行:2019年7月20日
物語:
感情を感じられず他人の感情もわからないソン・ユンジェは古本屋を営む母親と
祖母との三人暮らし。幼いころから周りには異端者のように見られていたが、
愛情を注がれて生活していた。しかし、ある事件で祖母は死に、母は意識がない
状態となってしまったが、ユンジェには何の感情もわいてこなかった。
1人で生活を始めたユンジェの前に現れたのは物心もつかないうちに親とはぐれ
不良少年となったゴニだった。ゴニはユンジェへ常に怒りをぶつけるのだった。
【感想】
感情を持てないということはどういうことなのか?が丁寧に描かれ、スーッと心に入ってきました。ユンジェの視点から綴られる文章は薄い膜で覆われているみたいで、物語をどこか冷めた目で眺めているかのような感覚でした。しかし、幕間から見え隠れする感情のほとばしりがポンポンと心を刺激し、いつしか物語の世界に入り込んでしまいました。
出てくる登場人物たちは極端ではあるものの、社会で見受けられるような人たちで、感情が感じられないユンジェにしても、周りで言えば"空気を読めない"と言われる人たちに近い存在。でも、"空気が読めない"事が悪いのではなく、その人自身を理解し、なぜそのように発言したり行動したりするのか?と思い至ることが大事てあることを改めて思い起こさせてくれました。ゴニも彼の育ってきた背景を知ると手の付けられない不良少年から愛おしい少年へと心持が変化してしまいます。
ユンジェとゴニの出会いはどんな化学反応を起こすのか?ぜひ本を読んで確かめてください。