虹色空間から~

日々の生活で興味あることを綴ります

日本の悲劇

監督:小林政広
出演:仲代達矢北村一輝/大森暁美/寺島しのぶ
製作年:2012年
製作国:日本
 
物語:
癌で余命3カ月と宣告された不二男(仲代達矢)は、医者の制止も聞かずに勝手に退院してしまう。不満を抱きながら父の世話をやこうとする息子の義男(北村一輝)に対し、不二男は反発するかのように自分の意見を押し通そうとし、二人の会話はかみ合わない。次の日、自室の扉を固く閉ざして閉じこもってしまう。義男は、父の突然の行動に戸惑い困惑する。
 
感想:
カット割りが少なく、同じ位置からのカメラ映像が多く、人物が画面から消えてしまい、声だけとか足音だけとかのシーンも多く、まるで舞台を見ているかのような感覚に陥りました。物語は全て家の中だけで進み、登場人物も家族のみです。家族で交わされる会話や家族の過去の回想シーンによって、この家の状態が明らかになってきます。見ている方にも集中力が要求されます。また、音楽もいっさい使用されず、最初と最後のクレジットも文字のみが映し出され、ごまかしのない直球の映画だなと感じました。
自分はうつ病となり精神科に入院をして、新たな気持ちでやりなおそうと自宅に戻ってきたその日に母が倒れ、四年間寝たきりだった母を世話して見取ったと思ったら、すぐに父が肺がんを患い手術をすることになり、親の面倒を見ることが重くのしかかってきます。しかし、リストラされ失業中であるため、父の年金を頼りに生活している身でもあります。父の世話から開放されたいが長く生きて欲しいという葛藤を抱えているなか、父は一度手術したものの途中で治療を中断し自宅に帰ってきてしまいます。そして、部屋に閉じこもり、食を断ち衰弱死を選びます。いわゆる消極的な自殺です。息子は開かないドアの前で泣き、もがきます。
この家族は家族だけで悩み追いつめられてしまっている、誰かに相談をするということ、外に助けを求めようとすることが念頭にないかのようです。なぜ、と思わざるをえませんが、日本にはこのような家庭が多くあることは事実です。国民性なのかもしれませんが、内向き、内向きに考えが追いつめられる人が多いように思います。そこに、日本の悲劇を私は感じました。