虹色空間から~

日々の生活で興味あることを綴ります

高田郁著「銀ニ貫」

本の情報
著者:高田郁(たかだかおる)
収録作品:「銀ニ貫」
出版社:幻冬舎幻冬舎時代小説文庫
初版:2010年8月5日
 
物語
大阪の寒天問屋井川屋の主・和助は大火で消失した天満天神宮の再建に寄進するための銀ニ貫を懐に入れ家路についていた。偶然に仇討ちに遭遇し、切られた父をかばい立てする少年・鶴乃輔を銀ニ貫で救う。和助は鶴乃輔を引き取り、松吉という名前を与える。松吉は井川屋で商人の厳しい躾と生活に耐えながら、新たな寒天を作り出すという夢を持つ。しかし、松吉の前には次々と困難が立ちはだかる。
 
感想
主人公はとても純粋で一途な青年・松吉。武士を捨てた松吉が商人として立派に成長していく過程を描き、とても爽やかな印象をもつ作品でした。また、松吉を取り囲む人々も厳しくも優しい人々ばかり。ほのぼのとしてきます。疲れを感じたときに読みたくなります。
松吉の勤める店は寒天問屋のため、寒天のことがとても詳しく書かれていて、初めて知ったことがたくさんありました。また、新しい寒天ができるのか、新しい寒天を使っておいしい羊羹ができるのか、読んでいてドキドキでした。新しいものを作るというスリル感を存分に味わうことができました。
作者の高田郁は以前、漫画原作を書いていた経歴があり、心ときめくドキドキの山の作り方を心得ているなと強い印象を受けました。素敵な余韻にいつまでも浸れる作品でした。