虹色空間から~

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原田マハ著「楽園のカンヴァス」

本の紹介
著者:原田マハ(はらだまは)
収録作品:「楽園のカンヴァス」
出版社:新潮社
初版発行:2012年1月20日
 
物語
大原美術館で監視員を勤める早川織絵のもとに暁星新聞社の高野が尋ねてきた。アンリ・ルソーの大規模な展覧会を企画しているという。そして、ニューヨーク近代美術館所蔵の最晩年の代表作「夢」の貸し出しを織絵が交渉の窓口になるなら検討するとチーフ・キュレーター(学芸部長)のティム・w・ブラウンが言ったという驚くべく事を告げた。織絵はかつてオリエ・ハヤカワとしてルソーの研究をしていたのだった。織絵とティムが出会った十七年前の過去が鮮やかに蘇った。
 
感想
絵画の鑑賞には過去何度か行きましたが、素敵だなとは思っても、吸い込まれるように絵に夢中となったことはないので、絵画が好きな人はこんなに様々なことを絵から感じ、作者の思いに触れようとするのかと感心しました。少し絵画を見るときの視点が変わりそうです。
アンリ・ルソー作の「夢」と同じモチーフの「夢をみた」にまつわる様々な謎が絡み合い、謎が謎を呼んでとてもドキドキする展開でした。伝説のコレクターが所蔵する「夢をみた」が真作なのか贋作なのかを一冊の本に書かれた物語を一日一章ずつ読んで論評するということで、ルソーにまつわる物語を同時に読むことになります。二つの物語を同時並行で読むことに最初は戸惑いがありましたが、読みすすめていくうちに引き込まれていきました。しだいに、織絵の思い、ティムの思い、ルソーの思い、全てが重なり合い、ひとつの物語りとして結末をむかえました。読んでいる途中には収集がつくのだろうかと不安ではあったのですが、きっちりと組み立てられた納得できる結末で、爽快な気持ちになりました。
名前しか知らなかったアンリ・ルソーがとても身近な画家として心に残ることになりました。ルソーの作品たちに出会いに出かけたいものです。