虹色空間から~

日々の生活で興味あることを綴ります

壽 初春大歌舞伎 夜の部

鑑賞日:2013年1月23日
 
演目とあらすじ:
「ひらかな盛衰記 逆櫓」
船頭の権四郎(松本錦吾)の家では娘のおよし(市川高麗蔵)の前夫の供養が営まれている。その席でおよしと前夫の息子である槌松が他人の子と取り違えたことが語られる。一方、およしの夫の松右衛門(松本幸四郎)は「逆櫓」の技を買われ、源義経の船頭に命じられ戻ってくる。しばらくして、お筆(中村福助)と名のる女が訪ねてくる。取違えられた槌松が死を伝え、若君を返してほしいと頼む。しかし、権四郎は腹を立て、若君の首を討って返そうと立ち上がる。そこへ、松右衛門が若君を抱いて姿を表す。そして、我が身の上が木曽義仲の家臣で樋口次郎兼光であること、若君は義仲の遺児の駒若丸であると伝え、事情を説明して権四郎の怒りを解く。やがて、日がくれ松右衛門は船頭仲間と共に、逆櫓の稽古に出かけていく。船着場に着いた松右衛門は素性が暴かれていた。彼を召し取ろうとする船頭たちに取り囲まれ、立廻りをする。そこへ、畠山庄司重忠(中村梅玉)が登場する。重忠の配慮によって、駒若丸は槌松として命を助けられる。一方、重忠の温情を感じた松右衛門は縄にかかる。
 
仮名手本忠臣蔵 七段目 祇園一力茶屋の場」
大星由良之助(松本幸四郎)は連日一力茶屋で遊んでいる。そこへ塩冶の元家臣三人が足軽の寺岡平右衛門(中村吉右衛門)を供にやってくる。由良之助に仇討ちの心があるのか、真意を聞きに来たのだった。しかし、酔った由良之助は命を捨てて仇討ちするのは馬鹿らしいと言い寝入ってしまう。元家臣たちは憤慨し討ちかかろうとするのを平右衛門がなだめ、奥へ引き取らせる。由良之助を介抱しながら、平右衛門は討ち入りに加わりたいという願書を枕元に置くが突き返され、諦めて奥へ退く。そこへ、由良之助の息子の大星力弥(大谷廣松)が忍んで来て、密書を渡す。密書を読もうとしていたところへ、塩冶の元家老の斧九太夫(市村家橘)が現れ、由良之助の本心を探ろうとする。これを巧みにかわし、人目がなくなったところで密書を読み始める。その時、二階座敷に居たお軽(中村芝雀)が恋文と思い手鏡で覗き読みをしてしまう。それを知った由良之助はお軽を身請けすると言い出す。喜ぶお軽の前に平右衛門が現れ、驚きの再開をはたす。実は二人は兄妹であった。身請け話と密書の話を聞き、由良之助が秘密を知ったお軽の命を奪おうとしていると考え、自分の手で斬ろうとする。そこへ由良之助が登場し、ふたりの心底を見極めたと語り、平右衛門が仇討ちの徒労に加わることを許す。そして、お軽の手を添えて、床下で密書を盗み見ようと潜んでいた九太夫を刀で突き刺し、功を立てさせる。
 
「釣り女」
妻を持とうと考えた大名(中村橋之助)は縁結びの神と名高い西宮の恵比寿神社へ太郎冠者(中村又五郎)を道案内させ参詣する。そこで夢のお告げがあり、釣竿を用いて良い妻を釣り上げることにした。まず大名が美しい上臈(中村七之助)を釣り上げ妻とした。太郎冠者も自分も美しい妻を釣り上げようと釣り糸を投げる。しかし、釣り上げたのは驚くほどの醜女(坂東三津五郎)であった。逃げ出そうとする太郎冠者だが、醜女は離そうとはせず、しかたく妻とした。
 
感想:
久しぶりの歌舞伎見物でした。席は二階の左側で花道が見えないのが残念でしたが(客席に花道を映すモニターがある)舞台には近く、役者さんの表情が良く分かりよかったです。やはり表情がしっかり分かった方が面白みが増します。長台詞が続く場面ではついウトウトがでしまいましたが、比較的集中して舞台が見れました。正月公演なので、明るく楽しい演目のおかげだったかもしれません。
「ひらかな盛衰記」は立廻りに見どころがありました。松右衛門を捕らえようとする船頭たちを右に投げ、左に投げ、次々と投げ捨てる長丁場の立廻り。これぞ歌舞伎と思いました。どっしり構え続ける幸四郎も素敵でしたが、投げられ役の役者さんの力技に感心しました。本当に縁の下の力持ちです。
仮名手本忠臣蔵」は團十郎の休演で幸四郎が由良之助を演じました。吉右衛門との兄弟競演を初めてみることになりました。幸四郎だけ見ていると吉右衛門と雰囲気がとても似ているなと思いましたが、一緒の舞台に立っていると幸四郎はスッキリしたスマートな感じ、吉右衛門はどっしりとしていて重みがある感じで違いが際立っていました。演目の方は祇園茶屋の華やかさと仇討ちにむかう決意の明暗のコントラストが良く、笑いながら物語の中に引き込まれていたら、最後は九太夫が討ち取られるという結末。シリアスを笑いに変える、これも歌舞伎の真骨頂です。
「釣女」は以前狂言で同じような内容の「釣針」を見て笑い転げた覚えがあり、とても楽しみにしていました。歌舞伎なので舞もあって、ちょっと上品な印象でしたが、太郎冠者が醜女を釣り上げるびっくりする場面は本当に笑わせてもらいました。また見たい演目です。
三演目とも充分に堪能し、今年四月にオープンする新歌舞伎座にぜひ足を運びたいなと思いました。