虹色空間から~

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重松清著『赤ヘル1975』

本の紹介
収録作品:赤ヘル1975
出版社:講談社
初版発行:2013年11月28日
物語:1975年(昭和50年)。広島カープの帽子が紺から赤に変わり、原爆投下から30年が経った年。広島の街に頼りない父親のために引っ越し繰り返す少年・マナブが東京からやってきた。転校した中学校のクラスには広島カープファンのやんちゃな野球少年・ヤスと新聞記者志望のユキオがいた。この年の広島カープは好調で、初めての首位争い繰り広げていた。広島のことを全く知らなかったマナブは広島カープのことはもちろん、30年たっても広島の人たちに残る原爆の傷を知っていく。
 
感想:
広島カープ初優勝の頃は映像でしか知らない世界です。私か知った時には常に優勝争いをしていました。それから低迷期に入り、今年は何とか優勝争いに踏みとどまっている状況。1975年ほどではないにしても、その当時の興奮と重なるものがあります。また、8月というこの時期に読んだことで、原爆投下の傷の深さがより胸に迫ってきました。物語は広島カープの事と原爆投下の傷跡の2本が柱となって進んでいきます。原爆の後遺症にずっと苦しめられるという話はよく聞きましたが、具体的なイメージはわきませんでした。しかし、投下から30年たっても広島では原爆について子供でも友達と話ができないほどの傷がおおっていること、今まで元気でも突然に気力がなくなり疲労しやすく働けなくなってしまう人がでてしまうこと、物語の中で語られる話は広島の苦難が身に染みました。広島カープも創設時から貧乏で弱小。負け続けるのが当たり前で苦難な状況が続いたことを物語の中で語られます。だからこそ、広島カープの首位争いは広島の人たちの希望となり、大きな盛り上りとなっていたことが目に浮かびました。この時期にこの本を読めたことに幸せを感じます。
好きな広島カープをより好きになりましたし、原爆のことを知ったつもりではダメで、もっと知る努力をしないといけないなと感じました。