虹色空間から~

日々の生活で興味あることを綴ります

島本理生『ファーストラブ』

【作品紹介】
収録作品:ファーストラブ
出版社:文藝春秋
初版発行:2018年5月30日
物語:夏の日の夕方、多摩川沿いを血まみれで歩いていた女子学生・聖山環菜が父親を刺殺したとして逮捕された。環菜は就職活動の最中で、その面接の帰りに凶行に及んだのだった。環菜の美貌も相まって、この事件は取り上げられた。なぜ彼女は父親を殺さなければならなかったのか?臨床心理士の真壁由紀はこの事件を題材としたノンフィクションの執筆を依頼され、環菜や担当弁護士で義弟である庵野迦葉と面談を重ねていく。

【感想】
読み始めてすぐに感じたのはスラスラと読める相性の良い文章だなということでした。相性がよい文章は話がスーッと入ってきて、一気に読み上げてしまうことがほとんどでした。この本もやはり一気に読み上げました。
幼少期の家庭問題を取り上げた重いテーマではありますが、主人公が臨床心理士ということもあって、客観的に物事をとらえる書き方なので、読んでいても変に感情移入することもなく、淡々とストーリを追えました。
主人公である由紀、義弟の迦葉、被疑者の環菜、3人の幼少期における傷がストーリーの上で絡み合い、展開の推進力となって、その傷の謎を解き明かすミステリー仕掛けがこの本の最大の魅力だなと感じました。