【作品紹介】
収録作品:塞王の楯(さいおうのたて)
著者:今村翔吾
出版社:集英社
初版発行:2021年10月30日
物語:数々の戦が行われた戦国時代。しかし、その裏で重要な役割を担ったのは
様々な「職人」たち。越前・一乗谷の戦乱で家族を亡くした匡介は塞王と
呼ばれる源斎に助けられ、石垣職人として戦いに参加する。
【感想】
第166回直木賞を受賞した作品です。単行本のページ数は500を超え、分厚さから手に取るのをためらう気持ちになりますが、読み始める流れるように読み進められます。また、時代小説を読んで久しぶり新鮮さを感じられ、新しい驚きが次々と襲い、とても楽しめた作品でした。
戦国時代の終わりを迎えるこの時に、大津城と京極高次という名を耳にすると、歴史好きな人は関ケ原の時に西軍を足留めした籠城がパッと頭に思い浮かぶことでしょう。その戦いを石垣釣りの人々を中心に描くという、思いもよらない視点からの展開に心がワクワクしました。石垣は城の基礎で、敵の侵入を阻むためどっしりと構えているというイメージがありましたが、戦いの中で変幻自在に石垣を変化させる戦い方があるなんて!本当に発想に驚きです。もちろん石垣の基礎知識もたっぷり学べます。今度、城を訪れた時には最初に石垣に目が行きそうです。