虹色空間から~

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映画『アイヒマン・ショー 歴史を映した男たち』

出演:マーティン・フリーマン/アンソニー・ラパリア/レベッカ・フロント
製作国:イギリス
製作年:2015年

【物語】
1961年、ホロコースト(「焼かれたいけにえ」というギリシャ語を語源とする言葉。第二次世界大戦ナチス・ドイツとその協力者によるユダヤ人の組織的・官僚的・国家的な迫害及び殺戮)に関与し、数多くのユダヤ人を強制収容所に送り込んだ元ナチス親衛隊将校アドルフ・アイヒマンの裁判が行われることになった。テレビプロデューサーのミルトン・フルックマン(マーティン・フリーマン)はこの裁判の模様を世界に届けようと意気込み、赤狩りによって干されていた撮影監督レオ・フルヴィッツ(アンソニー・ラパリア)を呼び寄せる。しかし、裁判の模様を放映するには様々な問題が待ち構えていた。

【感想】
ナチス・ドイツによるホロコースト関連の映像や書物は時々目にしていましたが、アイヒマンと言う名には記憶がありませんでした。ホロコーストは国家的に行われ、多数の人物が重要な役割を果たしていたので、記憶に残りにくいのかもしれません。しかし、それだけ多くの人が関わっていて、なぜこんなことが起こってしまったのか?暴走した人の恐ろしさをホロコーストに触れるといつも感じます。そして、世界中の人がそう思えるようになったきっかけを作ってくれたのがアイヒマン裁判を放映した男たちなんだと知りました。
アイヒマンの裁判はテレビやラジオで世界中に流され、大きな衝撃を与えました。そして、ナチスの迫害を実際に受けたユダヤ人にとっても衝撃でした。 裁判が始まる前、強制収容所から生き延びた人たちは自分に起こった体験を話しても作り話として同じユダヤ人にも信じてもらえませんでした。それほど強制収容所での出来事は人の想像ではおよびつかない凶悪残忍で悲惨なことでした。証言だけでなく、映像として残っているからこそ、現実として受け止められます。この映画では戦争当時に撮影された映像も挿入されていて、短時間の映像でも、フィクションでつくられたもの以上の衝撃と現実を伝えます。
このテレビ放映が果たした役割は本当に大きなことで、世界中でホロコーストを繰り返してはいけないという思いが共有できましたし、さらに撮影監督をつとめたレオの「アイヒマンは特別ではない。誰でもアイヒマンになりうる危険がある」との思いも伝え続けられていると思います。このこともそうですが、日本も戦争当時に残忍な行為をたくさんしましたし、悲惨な体験もありました。風化させずに伝え続けることをしなければいけないと改めて思いました。