虹色空間から~

日々の生活で興味あることを綴ります

谷瑞恵著『額を紡ぐひと』

【作品紹介】
収録作品:額を紡ぐひと
出版社:新潮社
初版発行:2018年2月20日
物語:カレー専門店を営む池畠に会うため、この街に越してきて、オーダーメイドの小さな額縁店を開いた奥野夏樹。5年前のある事件を彼がどのように思っているのか知りたくてカレー専門店へ足しげく通っていた。その店でよく会う久遠純は額縁店があるビルのオーナーの息子で、年中アロハシャツを着ていて、夏樹にまとわりついてきてうざったい存在である。ある日、淳は“宿り木”を額装したいというお客を連れて店を訪れる。なぜ、額装をしたいのか?依頼人の心を読み解きながら、夏樹の額づくりが始まった。

感想:
自分の思いがこもった物の額をつくりたいと願う人々の心に抱えている物語を知り、心を浄化していくような額縁をつくっていく。いったいどんな額なんだろうと想像するだけでワクワクしてきます。小説の中なので想像するしかなくて、目で見ることができないことがとても残念ですが、ひとりひとりの心に抱えている物語を読み解きながら本の中で額がつくられる過程は、何だかとっても心を温かくしてくれます。作者のサラッとしたやさしい文体が物語とマッチしていて、悲しい想いを語っていてもどこか爽やかさがあって、希望を感じることができる、それがどんどんと引き込まれていく要因かなと思います。
絵画でも額は大事とよく言われますが、額の大事さがこの本を通して本当に分かった気がします。絵画や書を鑑賞する時、もっとまわりにも注目していきたいなとも思いました。